点火系ってついつい最後まで行ってしまうものです。プラグ交換で満足している人は、この記事を読まないほうが良いと思いますよ。
それでも興味がある人にCDIで現在のところ一般には最強?というか一人勝ちの米国MSDブランドの点火システムと、日本代表として永井電子を比べてみたいと思います。と言っても永井電子はマルチプル点火CDIの製造を全て終了しているようです。
製造終了と聞いて感じますよね? そうですCDIはとても古い技術で今どきの車には無関係なものなんです。二輪では2サイクルエンジンに相性がよく50歳以上の人はCDIと聞くとバイクを思い浮かべる人も多いでしょう。今に至っては日本のような豊かな自動車文化が育たない市場では古い車はすぐに廃棄されCDIの需要は無いに等しいのです。
中古市場で永井電子のCDI製品は大変な人気を誇っています。その理由もこの記事で分かってくるでしょう。
CDI、MDI、MSDとは何か
これらすべてCDI(Capacitor Discharged Ignition)です。Mが付くのはCDIの弱点を補うために生まれたマルチ点火の頭文字を付けたシステムのモデル名です。
そもそも12Vを一次コイルに提供してポイント信号によって二次コイルで昇圧してからプラグ点火するのがストック状態ですが、CDIはポイント信号を横取りして一次コイルに対して数百ボルトに昇圧した電気を送り込み、最終出力は数万ボルトにも達するシステムです。▼割り込む接続図の例
それを1回の点火信号に対して2~3回の昇圧した強力な火花を連射するのがマルチプル点火システムです。
効果はアイドリングが安定、素早いレスポンス、失火が減り完全燃焼、トルクフル、高回転の点火力というところです。
日本のMDIか、米国のMSDか
はっきり言ってMSD好きな人が多すぎるので興味が無いかもしれませんね。でもMDIは廃盤になっていても日本の代表として歴史的遺産の記録を残したいと思います。今回は同じ車両で2セットをテストしていますので違いがよく分かりました。
日本のMDI
編集部の車両にはMDI Ultra9500 というマルチ点火CDIが搭載されています。それと汎用ですがコスパの素晴らしいFTM-063GTコイルのセットはパーフェクトセッティングです。とてもコンパクトで取付場所に困りません。円筒コイルならMSDのブラスター2コイルがお薦めです。
印象は「シルキーで滑らかな走り」です。点火の旋律が完璧で淀みがないので「サラサラサラ」と走り出すイメージです。必要以上の爆発力を求めるのではなく乱れることなく確実に1回に付き3回の点火を寸分違わぬタイミングで行う正確性を求める人にはこれ以上のものは無いのではないでしょうか。
乾いた排気音と乱れぬアイドリングは秀逸と言えます。これぞ日本的美的センスの集大成です。レブリミッターは装備されておりません。
米国のMSD
対してMSD6シリーズ(SCI)とブラスターSSコイルのセットです。アナログMSD時代のホンダVTEC高回転向けのモデルです。これでもコンパクトという名称になっていますが、あくまでもアメリカ人の感覚ですね。中のトランスが大きいのでしょう非常に大きく重たいので設置場所に困ります。MDIの倍以上の体積と重量があります。
MSDはプラグコードやコイルの要求仕様があって低抵抗のものを使うように指示されています。1.2ΩのFTM-063GTコイルでも要求に足りないのかミスファイアがありましたが、0.3ΩのブラスターSSコイルでは順調に点火している模様です。
燃調は濃い方が調子が上向きになる傾向が強いです。燃料をもっとよこせ!と言わんばかりです。大排気量のアメリカンパワー向けというイメージが強い。レブリミッターがあります。
印象は「燃調が濃くなる傾向なので燃費は悪化するがトルクフル」「滑らかさは無いが力強い」「マルチ点火の旋律が取れていない」「アクセルオフのアフターファイアが増える」「雑だけど力持ち」
MDIとMSDどっちを選ぶ?
さて、どっちが良いかと聞かれたら迷わず永井電子のMDIと答えます。V8 6000ccとかなら別ですが、ライトウェイトスポーツカーなどの場合は米国MSDは無駄が多い気がします。ぜひともこの製品はリバイバルしてほしいものです。
MSDにも今回装着したSCI6320という小型車&高回転向けのコンパクトモデル(と言っても大きいし、6000シリーズだし)をテストした訳ですが、MDIの整った点火旋律には敵わないという印象が強いです。
しかしMDIはすべて廃盤になっていますのでMSDを検討するのもありかと思いますが、実は今でもMSDはラインナップがたくさんあるんです。
日本ではオーバースペックな6ALばかり販売される傾向が強いですが、そんな中でも国内で流通が見られる6AL以外の製品があります。編集部オススメのMSD5520ストリートファイヤです。
内部はデジタル化されていてコンパクトなサイズでエンジンルームのイメージを壊さないのがいいです。消費電力も抑えられているので旧車にはピッタリです。
CDIは入れるべきかどうか
そもそもCDIを入れるのは、より力強い走りを求めた結果です。本来のストック状態は実にシンプルでそれもまた良いものです。
とはいえ歴史あるCDIのアフター市場が衰退してしまっても寂しいわけです。日本のMDIはいよいよ中古品狙いのみになりましたが、米国のMSDは健在です。どちらもそういう意味では入手可能です。滑らかさを狙うなら中古のMDI、燃料多めでも完全燃焼するパワフルさを求めるならMSDです。メリットとデメリットで見てみましょう。
CDIのデメリット
本来の性能を発揮させる導入には低抵抗の専用プラグコードに低抵抗コイルなどのシステム導入が必要でコストが掛かります。故障の際もパーツが増えた分だけ原因箇所が増えます。消費電力が増えてオルタネータの負荷が増えます。高出力のためデスビローター、デスビキャップ、プラグが消耗しやすくなります。大きく目立つ本体のため旧車のノスタルジックなイメージがダウンします。
CDIのメリット
キャブレター車両なら特に効果を体感するとができます。ポイント式のデスビでもオンオフの信号発信のみとなるので電極の消耗やパンクがほぼなくなります。燃焼効率が上がるので車検の排気ガス検査でも良好な結果が出せます。キャブセッティングがかなり容易になりセッティング(ジェッティング)の幅が広がります。ラフなアクセルワークが可能になります。
折衷案
最初は他の補機類に負担が少ないMDI5520などのを目立たないように取り付ける。低抵抗円筒式コイルと黒のハイテンションコードで旧車のイメージを大切にしつつ性能アップなんでどうでしょう。
実は上の写真はCDIをバッテリーケース内に小型ドライバッテリーと一緒にして隠しています。シンプルでストック的な組み合わせを試してみました。
まとめ
デスビ搭載車両の点火系パーツの最終形としてマルチ点火CDIは最上の選択肢だと思います。
ただ、旧車・クラシックカーの楽しみとして、ポイント点火に拘るのもの良いものです。
結局悩みます・・・
CDIは高性能でキャブセッティングがイマイチでも、普通に走らせてしまう程の威力があリます。つまり最高のセッティングが分かりにくくなるので、CDI導入前にセッティングを決めておくと良いですね。なにより旧車イメージが崩れる恐れがありますから考えてから導入したいですね。
予報は晴れのち快晴です。カーマニアック編集部でした。
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