《カーマニア》WEBERウェーバーのキャブメンテ「アイドル調整と同調」~良い混合気をつくる~

ウェーバーキャブの同調 カーマニア
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子供の頃は、電気自動車に夢を感じたのに現実になるとイメージしていたものと違っていた。思い描いていたものと何が違うのか。彼もまた私にもその答えが見える。

こんにちは!Answer Stock 「晴れのち快晴」@サニーです

カーマニアック第一弾では旧車にとって精密メカパーツ「キャブレター」を取り上げています。筆者が経験したリアルなトラブルでオーバーホールすることになった際の問題点など全4話にわたってご紹介していきます。今回の第3話はいよいよ最終調整ということでアイドル調整と同調となります。

  1. 「洗浄と面取り」
  2. 「組立てと油面調整」
  3. 「アイドル調整と同調バランス調整」
  4. 「火災防止のおすすめ」

キャブレターは自動車文化創成から長い歴史があり世界中に様々なタイプが存在しますが、イタリア発祥の名門WEBERウェーバー社製(現在はスペイン生産)のオーバーホール作業から抜粋して押さえておきたいポイントを紹介します。分解の詳細や基本チューニングはムック本などを一冊持っておくといいと思います。

WEBERパーツの調達先から展開図をもらいましたので掲示しておきます。

weberウェーバー分解図

 

 

安定したアイドリングは心地いい

極端なハイカムでアイドリングがバサバサとバラついているのもマニアにとってはカッコいいと思えてしまうものです。それは理由が分かっているからいいんですが、そうじゃないのに不安定なアイドリングの場合は気分が悪いものです。

smithのメーター

ここまでご紹介したスロットルプレート(バタフライ)の調整と油面調整などのポイントを押さえて組まれたキャブレターでしたら、この先の不安要素はありません。最初は基本的なジェッティングで始めましょう。図のようにアイドリングはアイドリングジェットが担当し、F11、F15などの一般的なエマルジョンなら3000回転付近から油面が変わりメインジェットに切り替わります。

アイドリングジェットからメインジェットへ切り替わり

アイドリング時のジェッティングですが、DCOE151の場合アイドリングジェットはアイドルミクスチャースクリューを2回転~3回転の間で調整できなければ番手を変えましょう。2回転以下なら濃すぎなので番手を下げる、3回転以上なら薄すぎなので番手を上げます。

ジェッティングは基本的に排気量によってウェーバーの基準セッティングがあるので、そこからスタートするのがセオリーです。ただ吸排気それぞれのパーツを換えるだけで基準ジェッティングから外れます。速くしたいからマフラーやエアクリーナーなどを交換する訳ですし、それは燃料を沢山吸ってもらうためのアップデートパーツですからジェッティングも同じ方向でチューニングしないとなりません。

アイドルミクスチャースクリューは丁寧に扱う

アイドリング調整の際に各バレルごとに揃っておらず、2回転戻しだったり3回転だったり、バラバラな場合はミクスチャースクリューの段付きが原因と疑われます。

ミクスチャースクリューの段付きの説明

上図のようにアイドリング調整は、いったん締めてから2回~3回転ほど戻しますが、締め方がきつ過ぎるとあっという間に段付きになります。ミクスチャースクリューの段付きの他にキャブレター側の穴も角が取れてしまうので本来の状態ではなくなってしまいます。

ミクスチャースクリューの段付きの写真

オーバーホールで交換する前の実際のスクリューの写真はこちらですが、ぱっと見は問題なさそうに見えますよね。これは何度か修正を入れていますので滑らかに見えますがこれでもダメなんです。20年くらい使われ続けたものですが交換となります。

新品と見比べてみましょう。こちらはサードパーティの真鍮製で精度の良し悪しはありますが、実際に比べると先ほどの段付きが分かりやすいです。このタイプは段付きしにくいですが、キャブレター本体の穴を傷めやすいので締め付け時は特に注意して扱わなくてはなりません。頻繁に弄らなくてもアイドリングジェットの番手が決まれば、普段はあまり触るところではありません。

アイドリング調整は規定値からスタート

まず全てのスクリューを2回転半戻しにしてエンジンを始動します。問題がなければ普通に掛かるはずです。1200~1500回転くらいに回転を合わせて各バレルごとにソフトに締めこんでから回転が元気なところから5分~10分ほど絞ってひとまず完了です。

全気筒分の調整が終わり、スロットルを触る程度に「チョコン」と開けた時に一瞬アイドリングが下がるような動きを見せるときは絞りすぎです。全気筒を1クリック(約5分~10分)程度でいいので開けてみてください。スロットルにちゃんと付いてくるところがベストポイントです。

こんな微妙な調整の時に便利なのが、電池駆動のデジタルタコメーターです。私は1番プラグコードにクランプコネクタを取り付けて使っていますが、付属のコードをプラグコードに巻きつけるだけでOKです。編集部のものよりもう少し反応速度が早くてカッコいいものでも3,000円以下で販売されてて正確に回転数が出るのでとても重宝します。

キャブレター調整にデジタルタコメーターが便利

トータルで2回転~3回転で収まれば概ね問題ないですが、番手が合っていない場合は目安があるので試してみてください。▼参考情報

【IJ番手の判断基準の目安】
※3回転以上ならアイドリングジェット番手が低すぎです。
※2回転以下ならアイドリングジェット番手が高すぎです。

 

燃調が薄いと点火系にも影響を及ぼします。一見関係なさそうですが混合気が薄い状態だとプラグの要求電圧が高くなるのでコイル等への負担が上がります。

いよいよ走行テストですが、セッティングが良ければ普通に走ってくれます。パーフェクトな状態は、つまり「普通」・・・ちょっとつまらないです。ここで編集部独自のチェックポイントがありますのでご紹介します。

般道走行での巡行領域に使われる1500回転ほどの回転数がポイントです。吹き返し(クシャミ・バックファイア)を起こしている場合は番手が低い可能性が高いので必ずチェックしましょう。キャブレターにとって爆風ですから放置厳禁です。

ジェットは50F8→50F9→55F8→55F9→60F8というようにエア比も交えるのがベストセッティングの秘訣です。この車体は50F8でバックファイアによる出火を経験し60F8で安定して静かでトルクフルになりました。

 

キャブレター2基以上の場合は同調(バランス)を取る

キャブレター1基の場合はこれまででほぼ終了ですが、2基以上ある場合それぞれのキャブレターのバランスを取る必要(シンクロ)がでてきます。その際に必要なのがバランサー(シンクロメーター)ですが、簡易的なものですが写真のようなシングルタイプでも充分です。

キャブレター同調 バランサー

各バレルごとに差し替えて吸気量を測定します。この測定の時はアイドル状態で測定して、更に1500~2000回転くらいに上げた状態で測定します。


それで問題なければパーフェクトですが、調整が必要な場合はスロットルレバーの調整ダイアルを回して左右のスロットル開度を修正します。吸気音が変わるのが分かります。

WEBERウェーバー同調スクリュー

また同じキャブレター内でバレルごとに吸気量が違う場合はスロットルプレート(バタフライ)の調整が誤っている可能性が高いです。残念ですがもう一度やりなおすか、コンプレッションゲージで各気筒ピストンの圧縮測定をしてみることもお薦めします。圧縮が抜けているようならエンジンブローする前にエンジンオーバーホールを検討しましょう。またエンジンが温まっていないと正確な数値が出ませんので時間を掛けて調整しましょう。

シンクロ・同調(バランス)が取れると、エンジンの振動も少なくなり不快なノイズも減り、吹け上がりもスムーズです。カーマニアック(エンスー)的に言うと、慣れれば音だけでシンクロメーター無しでも同調が取れるようになります。

各気筒の排気温度でエンジンの状態がわかる

高回転側の燃調セッティングのためエキマニ集合部に排気温度計やO2センサーを導入している方も多いかと思いますが、普段は各気筒の調子を見るために非接触温度計で確認するといいです。状態の良いときの温度を測定しておけば調子のバロメーターになります。これは各気筒ごとに見れるのがいいところなんです。

この個体は街乗りで600度程度ですが、二次エアのトラブルの時は200度も高い温度になりプラグは真っ白でした。早期発見、早期原因究明はとても重要なポイントです。カーマニアック(エンスー)な方は頻繁にプラグを外してチェックされますが、走行後は熱くて危険ですし、便利な道具を使って手軽に排気温度を計測するだけでも普段は充分だと思います。

薄すぎても高温になりますし、濃すぎても高温になりますが、どちらか分からない場合はプラグチェックするといいです。

あとがき

一通りのオーバーホールのポイントは以上となります。絶対外せないポイントを中心に紹介してきましたが、精度の悪いスペイン製ウェーバーであっても、ちゃんと組まれたキャブレターなら素晴らしい性能を発揮してくれます。キャブレターならご紹介したポイントは共通しているが多いのでチェックしてみるといいでしょう。

GinettaG4

さて次回は、ウェーバーメンテナンス火災防止のおすすめについてお伝えします。

旧車を愛する皆様へ 一緒に駆り続けましょう。

予報は晴れのち快晴です。カーマニアック編集部でした。

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