チヂミ塗装とも言う結晶塗装は古くからヨーロッパを中心に名門フェラーリなどハイパワーで特別なエンジンのヘッドカバーのコーティングに用いられてきました。
日本でもホンダのタイプRのエンジンはこの結晶塗装によって特別なエンジンであることを、ひと目でアピールするアイキャッチポイントとして利用されています。
こういった本格スポーツモデルのイメージを焼き付けられた世代の人々にとって結晶塗装はスペシャルなエンジンの象徴とされて来ました。
結晶塗装とは
塗装表面が日本文化のちりめんのように縮れて独特の表面になる特殊塗装で、施工する業者は多く見かけません。
結晶表面になる専用の塗料を使い高温の焼付によって表面が伸縮する仕組みなので設備もそれなりに必要でDIYでやるにはハードルが高いものです。
ネックなのは平均的な縮れ感を出すために慣れや技術力が必要で一般的な塗装のようにはいかない。
もともと需要が少ないもので、これまではこのような特殊塗料は一般には販売されておらず自分で補修しようにもやりようがなかったので純正塗装が剥がれるとそのままのエンジンを良く見かけます。
DIY用の結晶塗料が発売
こういったものは海外、とくにヨーロッパより北米で商品化されているケースが多い。
見た目のカスタマイズといえば圧倒的にアメリカと言っていい。
米国VHT塗料
結晶塗料も例にもれず米国製VHTのリンクル塗料がスプレー缶で販売されている。焼付にも対応しているが、焼付必須ではないところがDIYとなると向けとしてお勧めしやすい。
国内流通の色は黒、赤、青、緑の4種類となっているようですが本国には緑は見当たらず替わりにグレーがあリます。
耐熱温度は177度なのでサーキット走行のキャリパーには厳しいようです。
日本CARVEK塗料
国内ではCARVEKの結晶塗料シリーズがあり黒、赤、青、黄となっており色を混ぜれば様々なオリジナルの塗料を作ることができるのが嬉しい。
あとスプレーガン用に塗料原液の販売をしているので業務用として活用するなら間違いなくこちらの方が好ましいでしょう。
焼付け塗装を前提としているためDIYとなると少々難しい面が否めないがヒートガンを上手に使ってやれないわけでもない。
両者の違い
VHTとCARVEKの違いは、色のラインナップと焼付け塗装が必須というです。
VHTは焼付も可能ですが自然乾燥でも問題ありませんから手軽さではラッカースプレーと同等となる魅力があります。
CARVEKの方は120度20分の焼付が必要となっていますが、様々な色をつくることが出来ることとスプレーガンで広範囲の塗装にも向いている点は魅力的です。
今回はDIYで手軽に・・・という趣旨ですからVHTの方を使ってみたいと思います。本当に手軽なので編集部でも様々なものを結晶塗装にして楽しんでいます。
実際にヘッドカバーを塗装してみる
ジネッタG4のKENTエンジンはOHVなのでヘッドと言うよりタペットカバーです。アルミ無垢のドライサンプ専用の軽量カバーで存在感があるのですが、スペシャル感が足りません。
ちょうどタペット調整をする機会でもあるのでカバーを外す時に塗装したいと思います。脱脂洗浄はしつこいくらいに行います。
足付けしたあと全体を満遍なく平均的に塗装するのは通常の塗装と何ら変わりません。吹き付けても直ぐにシワが出来るわけではないので特別注意することもなく意外とあっさりと終わります。厚塗りしないとシワが出ないと聞いていたので側面は少し垂れ気味になってしまいました。
10分~20分ほど経過するとご覧のように表面が縮んできます。この部分は塗料が多く乗ってしまった為に大きなシワとなっています。触ると手には付かないけどグニュグニュします。(※触らない)
他の部分を見ると細かいシワがきれいに入っています。吹き付ける塗料の量によってシワの大きさが変わるため均一に塗料を乗せていくのがポイントです。
焼付にも対応しているので、ヒートガンで温めるとあっという間にシワが発生します。薄塗りで細かいシワを作りたい場合はこの方法があっています。大きなシワがほしい場合は厚めの塗装で自然乾燥が良いです。
結晶塗装の問題は乾燥時間
実は見た目は完成のようですが、シワの中がなかなか乾燥しません。2~3日は当たり前、自然乾燥だと1週間くらいは放置する必要があります。そこで私はヒートガンを時折使って乾燥時間を早めることにします。
それでも表面に直接触れず丁寧に扱って2日後にエンジンに装着することができました。あとはエンジンの熱で乾きやすくなります。
筆塗りできるかやってみる
余った塗料を使ってスズキの名車カプチーノのツインカムエンジンのヘッドカバーを塗ってみたいと思いますが、スプレー缶の中は少なくなっているので穴を開けて塗料を出して筆塗りすることにしました。さらに、ヘッドカバーは外さずそのまま塗ってしまうという暴挙に出ます。
スプレーでありながら塗料が意外と粘度が高いので筆塗りに向いています。思った以上に塗りやすく下地のカバー性も高いので二度塗りほどすると完成します。
完成したのがこちらです。筆塗りだと塗膜にムラがでるのでシワの出方が均一にならないようです。とは言え、パット見のビフォーアフターでは存在感抜群です。
あとがき
あの結晶塗装が、まさかの筆塗りでもここまで出来るとなれば誰でも出来ると思ってもらえたでしょうか。
問題は乾燥時間が長いってことなので、例えば中古のヘッドカバーを買って塗装して付け替えるくらいの方がキレイに仕上がって良いかもしれませんね。
何にせよ憧れの結晶塗装がDIYでここまで手軽にできるようにしてくれてこれらの商品は本当に素晴らしいと思います。
予報は晴れのち快晴です。カーマニアック編集部でした。
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