最新が最上のものではない。文化とはそういうもの、その時代の想いが詰まっている。次の世代に繋ぎたい。
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旧車ファンの皆さんこんにちわ!AnswerStock晴れのち快晴!サニー@です!
旧車のほとんどがECU(コンピュータ)はおろか、エアコンにラジオすら装着されていない車がほとんどです。そんな時代の車には発電機(オルタネータ)の相手はせいぜいヘッドライトくらいが大物で出力は40Aもあれば事足ります。しかしシートヒーター追加とか電動ファン化などちょっと欲をだすと電力不足に陥ります。。それに旧世代のオルタネータは諸々の関係で供給電気が雑で不安定です。実際その証拠にスマホの充電でiphoneを故障させてしまったり、ドラレコが故障したことがありました。
※抵抗無しのプラグやコードなどから発せられる点火系ノイズも電子機器に悪い影響を与えるので注意が必要です。
オルタネータは1980年代に経産省の支援を受け日本の技術力が牽引して新世代の小型・軽量化と高出力・高効率化を達成し、それまでの物とはもはや説明不要なほど圧倒的な性能差となっています。前回Lucasオルタネータの修理を記事にしましたが、今回はそんな高性能化で進化した国産車からのオルタネーター流用が可能か実証実験してみました。オルタネーターのスワップを検討をしている方には参考資料になるでしょう。そんな方に「これなら出来る!」と勇気を与えられたら幸いです。
Lucasオルタネータと現代のオルタネータの大きな違い
オルタネータの仕組みは基本的にダイナモから変わっておらず、回転する中心のローターが回ることで発電します。一般的なモーターも同じようにローターを回すと発電しますが、オルタネータは永久磁石を使っていないのでコイルに電流を流し励磁により磁束起動させない限り、手でも簡単にスルスルと自然に回るものです。それではオルタネーターの仕組みについて図解しましょう。
オルタネータの発電までの仕組みを説明すると、中心のローターに電圧制御するレギュレータからカーボンブラシを通じて電流を流すことで励磁し強力な磁力を発揮します。そして周りにあるステーターコイルが交流電流(AC)を発生させます。フレミングの左手の法則ですね。ここまでだといわゆるダイナモと呼ばれる旧世代の発電機です。
その交流電流(AC)をレクチファイア(ダイオード)が受け取りマイナスの波を取り去り直流電流(DC)に変換させてバッテリーに送る。(変換コンバーター) これが一般的となったオルタネータの動きです 。
しかしLucasのA127の場合は図解にあったS端子は無くIGによる励磁でなく約1500回転まで上げる事で発電を開始する特殊な仕組みを持っています。つまりエンジン始動後はチャージ警告灯が点灯し自動的に発電を開始しません。古い車がエンジン始動後に「一吹かし」する儀式はまさにこのため。これがLucasオルタネータに充電警告ランプのL端子一つしかついていない理由なのです。▲はLucas製オリジナルモデル40A(左)と現代のLucas型のアフター品70A(右)です。大きさが随分と違います。
アフター品のLucas型オルタネータA127は70Aと発電スペックが大きく内部パーツは現代なので、ある程度は効率も上がっていると思われます。実際Lucas型オルタネータを完全に否定している訳ではなく補器類だけは最新技術を容認する派なので、実証実験しているのです。
国産車のICレギュレータ付きオルタネータを流用する
新世代型となった国産車のオルタネータは10万キロ以上でも故障って聞かないですよね。ダイオードの進化や高性能化したレギュレータの制御や高効率化、部品精度の高さは勿論ですが、発電容量に余裕を持たせて稼働させているしているのも要因です。しかしながらサイズも形も車種で様々な国産車の流用となると簡単ではありません。
今回は旧車を通じた親友との話題から始まりました。これも自動車文化活動のひとつだと文化的レクレーションで流用実験を始めることにしました。▼はその親友のガレージで流用検討ミーティングの一コマです。
流用実験ミーティングで決まったのはいくつかのポイントを抑えて候補を見つけ出せば、オルタネーターのケースはアルミ製なので切ったり削ったりで調整が出来るので工作の難易度は高くないと判断しました。活躍したのはディスクグラインダーです。
ディスクグラインダーは安全ゴーグルと耐切創グローブをセットで利用しましょう。安全第一です!
オルタネータ流用で抑えておきたい5つのポイント
まずはサイズと形を現在のものにざっくり似ているタイプを探すことです。そこからGoogle画像検索やネットオークションなどに様々なオルタネータが出品されているので適当に見ていくつか候補が見つけて絞り込んでいきます。便利な時代ですから候補の型番を見つけて更にググれば海外サイトに寸法などが示されている場合があります。 ロシアのパーツサイトの情報が細かいようです。
最近のプーリーは低いテンションで高回転を保つため平たいリブベルトを使っているため、Vベルトのプーリーに交換が必要な場合があります。なるべくVベルトを装着したオルタネータを見つけるのがいいのです。それとプーリー交換の際はローター軸径が違った場合は、径の合うプーリーを別に調達するなど工夫が必要ですが概ね軸径は17㎜だと思います。
つぎに図の①のサイズが重要です。車体のブラケットからプーリーのセンターまでの距離が出来るだけ合致するものを選ぶ事です。多少狭い分にはプーリーにワッシャーで対応し、広い分にはオルタネータ側のブラケットを削る方法があります。Lucasはこのサイズが極端に小さく見つけ出すのに苦労しました。結局は削るしかありませんでした。
そしてオルタネータを前方から見てブラケットの位置がAの位置だったりBの位置だったりと様々なタイプがありますから概ね同じようなタイプを選ぶことです。 これもLucasと同じタイプが中々見つかりませんでした。
LucasオルタネータはB(バッテリ)とL(警告ランプ)しかありません。L端子がS(電圧センサー)も兼ねているように思われます。通常はB・L・Sの3つあればいいのですが、最近はECU制御端子などが追加されているので端子の少ない方を選ぶのが賢明です。
流用候補となったオルタネータは4種類
- 日産23100-ED01A 110A 容量が大きい、ブラケット位置が近い
- 日産23100-50Y07 80A 容量が充分、ブラケット位置が違う
- スズキ31400-82C30 50A 容量が少ない、ブラケット位置が違う
- 日産23100ーAP000 65A 容量はまあまあ、ブラケット位置は完璧
結果、ブラケット位置が近い①と④の2種類を実験用ドナーとして採用しました。
オルタネーターは保証付きのリビルト品なら、ほぼ中身が新品の物が安価に入手可能ですが、コア返却が必須だったりしますので壊れててもいいのでオークションや解体工場でコア返却用に1,000円位のものを買っておけばリビルト品が入手可能です。
今回は実験なので解体工場から購入した物を分解検査して現状で使用します。
時間があれば②も③も実験したいと思いますが、ガレージにオルタネータの山が出来てしまいますので機会があればその時に。。。
①と④で外見の形状を比較する
取付ブラケットがトップ側とアンダー側で180度の物が多い中、特殊な位置にあるLucas A127にあわせて選択したのですが・・・①は似ているけど違いますね。最終的に実車との取り付けに新規でステーを作る必要がありました。
▲①を実際に並べて比較すると、これだけ違う事が判明しました。これは厄介です。
それに比べて ▼ ④のブラケット角度はほぼ完璧です。④は発電容量が65Aと小さいのですが軽くて外径が小さいです。
①も④も平型のリブベルトなのでプーリーは移植しなければなりませんがローター軸は17㎜と同じでした。
それでは加工作業を①のオルタネーターから始めます。
①のオルタネーターを加工する
①はトップリア側に余計なブラケットがあるのでまるまる切除します。加工はアルミダイキャスト製でグラインダーに切断砥石ディスクを使えば容易いです。何度も言いますが安全第一!怪我をしないように専用の耐切創グローブとゴーグルをしましょう。
①はアンダーリアのブラケットをかなり削ってからスペーサーを入れないとなりません。適当な金属パイプを切って25㎜のスペーサーを入れました。
もう一方の最も力が加わる軸足はプーリーへの距離を合わせるために1㎜ほど削って微調整しました。
プーリーの取り付けは軸の周りのボディを大きく切り取って2.5㎜厚のワッシャーでケースとプーリーの隙間を0.5㎜とギリギリまで詰めてプーリーの取り付けをしました。
そして出来上がったのが、この隙間です。正直ここのクリアが最も難易度が高くあと数ミリでもプーリーが出っ張っていたら取り付けは無理だったでしょう。
取り付け可能な状態まで加工が完了しました。加工作業は2時間ほどでした。
②のオルタネーターを加工する
①も④もリブベルトなのでプーリー交換が必要です。そのままでは取り付けできないのは、どちらも同じでした。
④もシャフトがやっぱり谷底に潜っているので①のオルタネーターと同様に周りの山を削って頭出しをします。グラインダーでこのあたりまで切って削っての調整をします。軸に触っているのはベアリングの内輪なのでシャフトと一緒に回ります。
そこに①と同じく17㎜内径の2.5㎜厚のワッシャーを入れて0.5㎜ほど浮かせてプーリーのクリアランスをつくります。私はこのワッシャーをリブベルトプーリーをカットして自作しましたがフラットなワッシャー作成は大変でした。実験レベルなのでこれでいいですが実用には市販のワッシャーを購入した方がいいでしょう。
あとー0.2㎜ほど薄いワッシャーの制作したいところですが、集中力が切れました。
今回はこのクリアランスで良しとします。次にブラケット側を加工していきます。
アンダーフロント側のブラケットの凸部分を除く2.5㎜ほどを切り取ります。カットラインをマーキングして迷わず加工します。ボッシュの切断砥石ディスクは安い割によく切れて長持ちします。
そしてトップのブラケットは凸部分だけをカットして終わりです。約1.5㎜厚くらいでしょう。私は後からワッシャー調整出来るようにプラスαで0.5㎜ほど削りを入れました。
切り取ったものがコレだけです。④のオルタネーターはたったこれだけの加工で済みました。これなら量産も出来そうです。www
こんなに簡単に終わってしまうなんて、やっぱり④が正解っぽいですね。大きさも小さいのがいいです。そうそうアンダーリア側に入っていた圧入スペーサーは逆向きに打ち直しています。これで寸法も完全に一致します。まるで瓜二つのような姿です。
オルタネーターのレギュレータ端子について
端子は時代と共に増えてきています。①のオルタネーター端子はS・L・Cと3つあるのですが、C端子はアース短絡で能力を半減させ燃費を稼ぐ現代的な機能を有しているようです。本来ECU(コンピュータ)で無段階に制御するものですが、旧車に流用するならアースとの間にスイッチを付けて手動で負荷調整するのも面白いかも知れません。
今回C端子はオープンにして、SとLだけ使いますが、カプラーが無かったので平型端子を半田付けして取り出し配線しやすく加工しました。④のオルタネーターは右側のSとLだけのスタンダードなタイプなのでSをIGに繋ぎ、Lを警告灯ラインに繋ぎます。B端子のケーブルは8SQを2本束ねて新たに引き直しました。
車両に装着してテスト稼働
それぞれのオルタネーターを実車に取り付けて稼働テストを実施しました。
①のオルタネーターはブラケットの距離があまりに近くなりすぎて純正ステーが使えず短いステーを作成して装着しました。110Aの発電容量のタイプなので重いし大きくてシャーシとのクリアランスがギリギリでした。欲張ってもこの容量は不要のようですね。
そして期待の④のオルタネーターは純正のステーで簡単に装着が可能でした。このためLucasオルタネータA127に戻すのも簡単に出来ます。65Aと発電容量が小さいですが、その分、軽くて小さいのでシャーシーとのクリアランスも充分です。レギュレータ端子はハーネス付きだったので綺麗に取り付けできました。ワイヤーブラシで磨いただけですがまるで新品の様ですね!www
発電状態
①も④もエンジン始動と同時にアイドリングで14.5~14.6V程度の非常に安定した電圧を発生しています。
Lucasでは新品でもバラツキが激しかったので全くレベルが違います。エンジン始動してすぐにチャージ開始するので警告灯が点灯しなくなりました。点火系のCDIにも影響してかアイドリングもこれまでより安定しているようです。
唯一Lucasお得意のアクセルをあおってチャージ開始する儀式が無くなってしまったのが何だか少し寂しいです。でもこれはバッテリーにも良い影響を与えてくれそうです。
あとがき
実験でやった割には難なく成功してしまいましたが、プーリーと軸足のブラケットとの距離が最重要であることが分かりました。ここは削るよりスペーサーを入れて微調整するくらい余裕があった方が良さそうですが、意外とブラケットがプーリー寄りのオルタネーターがありませんでした。
実はスマホの充電ですが、急速チャージが起動するようになり電流の質が違う事が分かります。
世界的にLucasは汎用として広く利用されているため内部パーツの入手は楽ですが、こうした流用を見つけるのも楽しいものです。無加工でいけるなど、私の実験よりも良い流用情報がありましたらお送りください。強度を心配する場合は削り加工よりワッシャー追加で装着可能なタイプを探す方がいいかもしれせんね。
では豊かなカーライフを。 予報は晴れのち快晴です。サニー@でした。
今回の実験では様々なアドバイスやご協力をいただいたプロフェッサー江澤さんにこの場を借りて深く感謝申し上げます。
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